第2回フォトエッセイコンテスト「わが家のお仏壇物語」
佳作受賞作品
「でっぱった仏壇」
豊崎香穂理
(山口県・女性・41歳)
 我が家の仏壇はかなりの年代物で大きい。塗りも剥げていて、金と黒のまだらである。実はこの仏壇、我が家を建て直す際に買い換えるはずだったのである。ところが、祖父が自分が買った仏壇にはこだわりを持っていて「買い換えることはまかりならん」と言い出したため、この話はお流れとなった。かくて、新築の我が家には古い仏壇が置かれる事になったのだが、新居の仏壇スペースは、買う予定だった仏壇がおさまるサイズに設計されていた。そのため、古い仏壇はその場所におさまりきらず、大工さんに頼んで、家を改築してもらうことになった。
 結果、我が家の仏壇は仏間にきちんと収まった。その代わり、仏壇の後ろの廊下が50センチくらいの仏壇型のでっぱりが発生した。仏間の裏側にトイレのある我が家では、一日に何度もそこを往復しなければならない。家族は今ではすっかり慣れて、体をぶつけてうーうーうなる事はなくなったが、初めて我が家を訪れた人に、その旨の説明を忘れることがある。そういうときには、彼(彼女)がトイレに旅立った際に、ゴン!という音と「ぎゃぁっ!」という声が響き渡る事になる。
 祖父が亡くなった今、仏壇を買い換え、廊下を引っ込めればいいのだが、それを言い出す者は誰もいない。祖父があれだけこだわって大事にしていた仏壇だけに買い換えにくいのである。その上、でっぱった廊下にも、愛着がわいてしまっていて、もうどうしようもない。