第1回フォトエッセイコンテスト「わが家のお仏壇物語」
入選外優秀作
菩薩様とお仏壇」
(千葉県・女性)

山本桂子

 私が高校生の時、とても不思議な夢を見ました。あれから、30年近く経過していますが、まるで今朝見た夢のように、今も鮮明に蘇ってきます。それは、このような夢でした。
 私は焼け跡に佇んでいます。自宅が全焼したのです。肩を落としながら、焼け跡の片付けをしていると、くすぶった残骸から金色に輝く仏像が出てきました。元々、我が家に仏像などありません。仏像を手に取って、首をかしげていると、見知らぬ男性が、「それは普賢菩薩だよ」と教えてくれました。と、ここで唐突に夢は終了しました。
 実は、私は、この日まで『普賢菩薩』という、名詞を知りませんでした。初めて聞いた『ふげんぼさつ』という言葉を、忘れないように書き留め、その後に調べてみると、実在の菩薩であると分かりました。この不思議な話を、親や何人もの友達にしました。でも、誰も、まともに取り合ってくれません。私を心配する人はいましたが・・・。そして、自然と、心の中に封じ込めるようになってしまったのです。
 ここ10年で祖母や叔母が相次いで亡くなりました。早死にであったり、事故や重病であったりと、誰一人、幸せな人生を全うできていません。そんな折、たまたま、ある高名な寺へ一人で散歩に出かけました。そこで、一人の住職に出会います。偶然の出会いでした。そして、その方に、夢の出来事を聞いてもらうことになったのです。
 ご住職との出会いから、半年・・。我が家に、普賢菩薩様がやって来られました。また、お納めするお仏壇も購入しました。どちらも、ご住職のアドバイスです。普賢菩薩は女性の往生を助ける仏とのこと。開眼法要も終えました。私自身は無宗教でありますが、毎日菩薩様に手を合わせ、「祖母や叔母の魂よ、どうか安らかなれ」と、祈る毎日です。