第1回フォトエッセイコンテスト「わが家のお仏壇物語」
佳作受賞作品
「自分の姿を思い出す
藪林康樹
(大阪府・男性・37歳)
  私には、父がいません。私が一歳の時に交通事故で亡くなりました。私の実家には、父の仏壇があります。
 実家では、私はいつもその仏壇の前に布団を敷いて寝ていました。朝起きたとき、夜寝る前には、いつも仏壇に手を合わせていました。
 私には全然父の思い出は無く、私の中の父は仏壇とその写真しかありません。
 しかし、毎日仏壇に手を合わせることで、父に見守られている気がし、とても安心してすごすことが出来ました。もちろん仏壇の前ではいたずらも出来ません。仏壇の前で悪いことをすると父に怒られるような気がし、子供のころはとても怖いことのような気がしていました。とても小さな仏壇ですが、母もとても大切にしており、私にとってもとても大切な、たくさんの思い出が詰まった父の仏壇です。
 また祖父の家にはとても立派な仏壇があります。
 その祖父も昨年亡くなり、今ではその仏壇に写真を飾っています。祖父の家に帰るたび、この仏壇にもいつも手を合わせ、とても厳かな気分になっています。
 私にも子供が出来ました。三歳になる娘と、今日もう一人娘が生まれました。
 三歳の娘は、私の実家に帰ると、父の仏壇に向かって手をあわせ『おじいちゃんただいま!』と大きな声で挨拶をします。横で一緒に手を合わせ、父に向かって今の幸せを報告し、今後も見守っていただけるよう私も毎回お願いしています。また、祖父の家の大きな仏壇の前でも毎回同様の気持ちを込めてみんなで手を合わせています。
 子供の頃は、とても怖いもののように感じていた仏壇ですが、今の幸せがあるのも毎日仏壇に手を合わせた事により、みんなに見守られている結果のように思われ、どの仏壇も私にとってはとても大切で思い出深い仏壇です。
 写真は、私の三歳の娘が仏壇に手を合わせている写真です。二人の娘にも、私と同じ気持ちで仏壇の大切さをわかってもらい、今後も娘たちと仏壇の前で正座することを続けて行きたいと考えています。