第2回フォトエッセイコンテスト「わが家のお仏壇物語」
□八田神仏具店賞(八戸)受賞作品□
「我が家は現代仏壇」
須藤 誠
(岩手県・男性・45歳)
 父が他界して早一年が経とうとしている。
本日、一周忌を無事終える事が出来た。
 仏壇の前に座りこれまでを振り返った。五十九歳の時、脳梗塞で倒れて以来、左半身麻痺を抱えながらもその後の十八年間を懸命に生き抜いた父であった。
 他界する前の一年余りは病院で過ごした。闘病生活が始まって半年程すると自身の力で咀嚼できなくなり経管栄養となった。懸命に命の火を燃やし続けた父がインフルエンザに罹ったのは昨年二月。急逝と言える最期だった。
 どたばたしながらも、何とか葬儀を終わらせ一息付いていると、葬儀屋さんより、四十九日法要後の仏壇は如何いたしましょう?墓石はいつ頃をめどにお考えですか?
 初めて仏様を出した我が家にとっては驚きの連続だった。恥ずかしながら、葬儀後の自宅においては、位牌を拝んでいればいいと考えていた程の無頓着さである。
 葬儀屋さんの仏壇部で購入したのが我が家の仏壇である。膝が悪く正座が辛い母の毎日の焼香を考えれば、椅子がセットになっている現代仏壇が我が家にはぴったりだった。設置場所も、家族の団欒の場であるリビングとした。これもいい判断だったと振り返っている。手軽に焼香できるので家族の誰もが一日に何度もお参りする。きっと父も喜んでいるに違いない。日中一人きりで過ごすことの多い母も、仏壇の前であれこれ会話しているようである。
 最近驚いたのは、今年の元旦の出来事である。中学二年の娘が、「今年一番早くジジと会話したのは私だよ!」と得意げに話してきた事。娘にとってもこの仏壇が父との懸け橋となっていることを実感し、なんだか嬉しくなった。
 別の世界に居ても父は未だに我々と共にいると感じさせてくれる。この仏壇は我が家にとってかけがえのない存在である。