第1回フォトエッセイコンテスト「わが家のお仏壇物語」
□銅賞受賞作品□
「お仏壇娘」
中崎照子(熊本県・女性・42歳)
 熊本に嫁いだ娘の家族が来たこの三日間は、私ども老夫婦にとってまさにミニ台風の渦の中。孫は来て良し帰って良しと言いますが、その言葉を実感しました。
 娘一家を最寄り駅まで見送って家に戻り、ホッとしていた時です。居間の電話が鳴りました。私が出ると、いきなり泣き声。今し方見送ったばかりの小学六年の孫娘、裕美でした。「・・・おじいちゃんは?、おじいちゃん・・・」と涙声で言っています。電車の中から携帯電話でかけているようです。
 「裕美ちゃん、何かあったの?」と聞けば、「おじいちゃんとお仏壇で・・・、わーん・・・」。要領を得ないので、母親に代わってもらいました。母親によると、裕美は実家を離れる前に、おじいちゃんの読経に合わせて仏壇でお参りするつもりだったが、おじいちゃんが体調が良くないといって寝ていたため、仏壇にさようならが言えなかったことが残念でならないと言って泣いているのだとか。
おじいちゃんは八十六歳。孫の裕美は三日間、朝夕二回、食事の前に必ずおじいちゃんと一緒に仏壇でお参りしていました。おてんば娘で、学校では男の子と喧嘩しても負けないらしいのですが、以外にも仏壇の前では神妙なのです。金箔の神々しさ、おじいちゃんの年季の入った読経が現代っ子の心に不思議と共鳴したようです。裕美は黒檀の彫り物に使われている象牙やサンゴにも強い関心を示していました。家の仏壇は金沢仏壇といって、金箔と漆塗り、細かな彫刻が特色です。先代が昭和初期に購入しました。
 おじいちゃんが寝ていたのは、体調不良というより、孫の相手に疲れてしまったからです。電話の最中に、たまたま起きてきたので受話器を渡すと、「そうかそうか。来年またおいで」と、目を潤ませて嬉しげな表情。ホント、孫は来て良し帰って良しなのです。

<注>実家の母の目が悪いので、娘の私(中崎照子)が電話で内容を聞きまとめました。
 熊本に嫁いだ娘の家族が来たこの三日間は、私ども老夫婦にとってまさにミニ台風の渦の中。孫は来て良し帰って良しと言いますが、その言葉を実感しました。
 娘一家を最寄り駅まで見送って家に戻り、ホッとしていた時です。居間の電話が鳴りました。私が出ると、いきなり泣き声。今し方見送ったばかりの小学六年の孫娘、裕美でした。「・・・おじいちゃんは?、おじいちゃん・・・」と涙声で言っています。電車の中から携帯電話でかけているようです。
 「裕美ちゃん、何かあったの?」と聞けば、「おじいちゃんとお仏壇で・・・、わーん・・・」。要領を得ないので、母親に代わってもらいました。母親によると、裕美は実家を離れる前に、おじいちゃんの読経に合わせて仏壇でお参りするつもりだったが、おじいちゃんが体調が良くないといって寝ていたため、仏壇にさようならが言えなかったことが残念でならないと言って泣いているのだとか。
おじいちゃんは八十六歳。孫の裕美は三日間、朝夕二回、食事の前に必ずおじいちゃんと一緒に仏壇でお参りしていました。おてんば娘で、学校では男の子と喧嘩しても負けないらしいのですが、以外にも仏壇の前では神妙なのです。金箔の神々しさ、おじいちゃんの年季の入った読経が現代っ子の心に不思議と共鳴したようです。裕美は黒檀の彫り物に使われている象牙やサンゴにも強い関心を示していました。家の仏壇は金沢仏壇といって、金箔と漆塗り、細かな彫刻が特色です。先代が昭和初期に購入しました。
 おじいちゃんが寝ていたのは、体調不良というより、孫の相手に疲れてしまったからです。電話の最中に、たまたま起きてきたので受話器を渡すと、「そうかそうか。来年またおいで」と、目を潤ませて嬉しげな表情。ホント、孫は来て良し帰って良しなのです。

<注>実家の母の目が悪いので、娘の私(中崎照子)が電話で内容を聞きまとめました。

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