第1回フォトエッセイコンテスト「わが家のお仏壇物語」
佳作受賞作品
最後の贈り物」
(宮城県・男性)

間風輝

  生前の祖母はおしゃれ好きだった。普段、家にいるときでも、きちんと化粧をして、フリルのついたスカート服をはいて若さを演出していた。そんな祖母が三年前に他界した。
 葬儀を滞りなく済ませ、ようやく一息つきかけた時、小さな議論が起こった。
 お仏壇をどうするかで、父を中心とする従来の「和風派」と孫達が推す斬新なデザインの「家具調派」にわかれた。家の中で議論していても埒があかないので、親族総勢八人で、街にある老舗を訪れた。
店内に大小様々な仏壇が展示されている。
 それぞれの派で、これぞという仏壇を選んでみるが、結果はお互いに平行線を辿った。
 和風派の父が、家具調は仏壇らしくない。そもそも和尚さんが許さないだろうと言った。
 するとそばに控えていた店員が、徐に説明をし始めた。現在は価値観が多様化しているので、ご住職は檀家さんの意向を尊重される傾向にあること。また、どんなお仏壇を購入されるにせよ、毎日のご焼香やお供えを欠かさないのが最も大切であることを説いてくれた。
 帰途に祖父を見舞った。葬儀だけは参列したものの、祖父は腎臓がんを患ってホスピスに入院していた。そんな祖父が開口一番、ばあさんはおめかしだったから、それに見合った仏壇をプレゼントしてやりたいなあと呟いた。正に鶴の一声。祖父へお店からもらった家具調仏壇のパンフレットを見せると、祖父はゆっくりと大きく頷いてくれた。
 後日、我が家に件のお仏壇が安置された。家具調仏壇なら、家族が集うリビングに置いても自然な感じだし、祖母も寂しくないだろう。和風仏壇の急先鋒だった父が、得意気に家族へ話しているのが可笑しかった。
 入魂式も無事に済んだ。さあ、これからが本当のご供養だ。お仏壇は家の中にあるお寺だ。日頃のお手入れを心掛け、大切に守っていきたいと思う。