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第6回わが家のお仏壇物語

銅賞「母の形見」植田 尚宏(北海道・71歳)


私の大切にしていた仏壇は今から1年前のあの阪神大震災とともに家屋もろとも崩壊してしまった。血みどろになった私は必死に仏壇を探し何とか外観だけは助けることができました。震災当時は仏壇の修理などできるわけがありません。私は崩壊した我が家を後にして仏壇を近所から借りたリヤカーに乗せて燃え盛る神戸の街をさまよい歩いた。だがそれは無理な話、私はまずねぐらを確保してささやかなローソクに火を点け合掌する。食べることもままならぬ時、人は私の姿を見て笑った。それでも私は神戸の街をリヤカー引きながらひたすら歩き続けた。そんなある日仏壇の片隅にある小さな人形を見つけました。それは母がとてもかわいがっていた人形でした。寝るときもそっと枕元に置いている母の姿は何度も見ました。あれからもう18年が過ぎました。私は母の愛していたこの人形を仏壇の隅に飾ることにしたのです。

私には母の形見は何もありません。でも仏壇に手を合わせる度に見るこのコケシは今も私に話しかけているように思えてなりません。あの日起こった阪神大震災。すべてが私の人生を変えてしまいました。当時の心の傷は今も背負いながら生きていますが、でもくじける度に私は仏壇に向かって問い正します。私はこれでいいのかと。

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