専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第7回わが家のお仏壇物語
我が家に仏壇がおさめられたのは、ちょうど6年前。
次男が15歳で旅立ちました。
淡々と仏事をこなし、49日を迎える前に
ふわふわした気持ちで、仏壇を選びにいきました。
沢山の仏壇が展示されていました。これまで生きてきた中で、こんなにも空虚なお買い物があるのかと戸惑う私でした。
立派な仏壇を紹介されながら、店内をぐるぐる。選びきれないと諦めかけていた時、主人が、「お母さん、これにしよう。こっち、こっち」と私を呼びました。すると、そこには、小さな仏壇が。
「ほら、まさしが好きやった桜の花や」
仏壇の正面と、仏様が座る背面に可愛い桜が彫刻されてありました。
毎年、春になると花見に出掛け、ちらちら落ちてくる桜の花びらを、ニコニコしながら見ていた次男の笑顔が思い出されました。
桜の彫刻を彫ったという初老の職人さんが席を外すと、しばらくして中に納める仏具を持ってきました。 その仏具にも桜が施されてあり、「桜があるのは、これが1点でした……」
と言い、私の手に渡してくれました。
あの子が好きだった桜で供養してあげたらと、懸命に揃えて下さる姿に、初めて現実と向き合えた気がしました。
今年で7回忌を迎えます。仏壇に手を合わせる度、病気と闘っていたあの子の強さと穏やかな笑顔に思いを寄せ、元気を貰う私達家族です。
毎年春には、仏壇にも満開の桜が咲き誇り、写真の笑顔の様に家族も笑顔になります。