専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第7回わが家のお仏壇物語
こんなに早く我が家に仏壇を設えることになろうとは想像だにしませんでした。10年前の12月30日早朝、息子は私達家族のもとから遠い所へ旅立ってしまいました。インフルエンザ脳症でした。20歳の誕生日を目前にして卒業後の夢を熱く語っていたのに、さぞ無念だったことでしょう。あまりにも突然で私達も受け入れることができませんでした。何も手につかないつらい日々でした。そんな折、仏具店の方から、
「四十九日には白木の位牌を札位牌にして、お仏壇に祀ってあげられると良いですよ。」
と声をかけて頂いて、やっとその事に気付きました。狭くても息子の魂がホッと寛げる部屋が欲しい……その一念で探して探してやっと出会えたのが、縦60センチ横50センチで色はダークワインの紫檀の仏壇でした。数年後には実家の仏壇を祀りお墓を守って参りますので、今はその分室と考えて荘厳は控えて頂きました。一応の設えが完成して安堵しましたものの、仏壇と位牌がしっくり馴染んで見えることで又少し息子との距離が遠くなったと感じたのも正直な気持です。
朝食膳と般若心経を唱えることで一日が始まり夜の礼拝で終わる日がどの位続いたでしょうか。いつものように位牌に向かって話す私の耳に息子の声が聞こえたのです。それからは「おはよう 朝ご飯どうぞ。」『おはよう頂きます。』「お花買って来ますね。」『行ってらっしゃい気をつけて。』などの会話で、私は少しずつ平静をとり戻していきました。ドアを開け放った息子の部屋はいつでも誰でも受け入れて心を和ませてくれます。それに甘えて4・5年前から私の両親の位牌も同居して孫との暮らしを楽しんでいるようです。
我が家流のお供えについて白状しますと、好物は勿論、年中行事のお料理も欠かさず供えます。仏具以外に豆鉢や豆皿も使います。
御仏様、無作法な行為の数々を、どうぞ今しばらくお見逃し下さい。合掌