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第9回わが家のお仏壇物語

銅賞「わが家のお仏壇物語」森拓也(三重県・63歳)


「今日はみんなでお仏壇のお磨きするから」

「はあい」

私の実家には昔から金ぴかの大きく立派な仏壇がある。浄土真宗だから金ぴかなのか、中学校の校長をしていて村の名士だった祖父が無理して買ったからのか、今となっては知る由もないが、いわゆる名古屋仏壇と呼ばれるものであることは間違いない。子供の頃、一度「お洗い」と称して分解修理に出したような記憶があり、その輝きは今も薄れていない。もっとも、盆暮れには「お磨き」という一家総出の行事?があって、少なくとも真鍮製のリンや火台、燈明皿、仏飯器などは年に2回、その輝きを取り戻すことになる。

実をいうと、私はこのお磨きが嫌で嫌でしょうがなかった。白い真鍮研磨液を新しい布巾に染み込ませて黒ずんだ火台や燈明皿に塗り拡げ、少し時間を置いてから新聞紙でピカピカになるまで擦るのだが、研磨液には独特のにおいがあるし、真鍮の黒ずみと新聞紙のインク?で手が真っ黒になって、石鹸で洗ってもなかなか落ちない。だから細かい彫り模様のあるものは祖母や母にまかせ、私はなるべく凹凸の少ないリンや燈明皿を磨いて楽?をしていた。

仕事の関係で別居している私が孫から「じいじ」と呼ばれる年になり、もちろん祖母は遠の昔に101歳で他界していないが、いまだにお磨きは91歳になる母が一人で受け継いでいる。火事になると危ないからと蝋燭も燈明もいつの間にか電気に代わり、汚れなくなったので随分楽になったと思うが、長年の年中行事?はおいそれと手を抜けないようだ。私も退職したことだし、これからはお磨きにかこつけて実家へ帰りますか。

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