仏壇選びの達人

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第9回わが家のお仏壇物語

メイクリーン賞「母と仏壇」山田和彦(愛知県・69歳)


我が家の仏壇は、私が社会人となって間もないころ、父が病気で亡くなりそれをきっかけに購入したものだ。

私がまだ子供のころは、小さな木箱が仏壇代わりにタンスの上に置かれていた。現在の仏壇の前には母の遺影が置かれている。そのころから朝夕線香を焚くのが私の日課となっている。

「線香を焚くのを忘れんといてね。それに時々お花も代えてね」

母は病院のベッドで遺言のように念をおした。思えば私は自分の困ったときや、学生のときテスト期間中だけ手を合わせる勝手のいいお参りだったが、今では歳のせいか線香の香りに包まれ座っていると何故か心が落ち着く。

孫がまだ小さいころ、昔話の花咲爺さんを真似たのか仏壇の灰を部屋中まき散らし、母に叱られていたこともあった。母は父が亡くなってからは毎日仏壇の前に座っていることが多かった。

仏壇の中央には父の位牌や法事予定日が書かれた一覧表が置かれている。仏壇はこの世から亡くなって逝った人々が集う霊界の入り口なのかも知れない。

先日、仏壇の引き出しを開けてみた。右側の引き出しには、毎日使う蝋燭や線香が入れられ、この日、久しぶりに左側の引き出しを開けてみた。中には母の手帳や数珠などが入っていたが、奥をよく見ると5センチ四方の木箱が現れた。

木箱を開けてみると、中に入っていたものはメノウの指輪だった。記憶をたどってみると、高校の卒業間際に山陰地方に友人と旅行に行き、母の土産にと秋吉台で購入したものだった。土産を母に手渡したとき母は喜び、町に出かけるとき指につけているのを見かけたが、その後は見ていないし私も忘れていた。恐らく大切に仏壇の引き出しに保管していたのだろう。

「母さんありがとう」

私は乾いた布で丁寧に仏壇をふき取ると、ご先祖と両親に心から手を合わせた。

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