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第1回わが家のお仏壇物語

銀賞「父帰る」坂本義教(徳島県・男性・50歳)


 昨年(2008年)は亡父の七回忌でした。一月の下旬に倒れ、亡くなったのが四月の下旬。僅か三ヶ月で黄泉の国へ旅立ってしまいました。
 早速、父の次の住処として仏壇が必要となりました。生前、菩提寺と決めてあった寺の住職と相談し、私の独断で、父の好みであろうと思われるタイプの仏壇を購入しました。父に多少の不満はあるにせよ、「死人に口なし」とばかり、許してもらうことにしました。
 初七日の法要が終わる頃から、私には新たな習慣が加わりました。就寝の一時間前に線香を手向け、一日の無事を報告し感謝する、というもの。もっとも単なる私の自己満足と言われればそうですが・・・。
 やがて季節は移ろい、すぐに父の新盆を迎えました。その日もいつも通り、仏壇に線香を上げ、手を合わせようとした刹那、急に仏壇がギシリギシリと音を立て、正面の仏具までもがゆらゆらと左右に動くのです。
 周りには私のほかに誰もいませんし、自宅近くを大型車両が通った訳でもありません。私がアルコール類などの影響で夢現の境目にいた訳でもありません。ちょうど誰かが身を屈めて室内に入り込もうとしている按配でした。考えられることはただ一つ、「父帰る」でした。
 父の急逝は、一族郎党にとってはショックでしたが、それ以上に全く想定外だったのは当の本人でしょう。残した老妻や孫娘のことなど気にかかることばかり。あちらの世界でも落ち着かなくなり、「愚息めを叱咤せねば」との一念で急遽帰宅したようです。
 その後、「仏壇の揺れ」はなくなりましたが、父は私の夢には時々現れます。機嫌の良い時もあれば、ややご不快の時もあります。そのような折には仏壇の前に座し、尋ねてみるのですが、遺影は笑うだけ。何一つ答えてくれません。
 さてさて父は一体どこに行ったのやら、行方は杳として知れず。仏壇の父の仮の宿かなと思ったりもしますが、不思議と心が落ち着く場所なのです。

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