専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第1回わが家のお仏壇物語
四歳になる孫の龍季が仏壇の前に居座り、時々悪さをするので雷を落とされる。特にお供え物の試食だ。
自分の味覚と一致したものであれば胃袋に収め、一口食べて合わなければ、その場に散らかし放題、我儘な孫だ。
この前は、木魚でポクポクと軽快なリズムを刻みながら、オテ~テ~、ツ~ナイデ~と童謡を歌いながら、もう一方の手でチ~ンと鉦を叩き、合いの手まで入れる。
居間では家族が顔を見合わせクスクス、噴き出す笑いに堪える。仏壇の中の婆さんも多分、微笑んで眺めているだろう。
仏壇はきらびやかで、中はどうなっているのかと幼いなりにも興味があるのだろう、顔を入れて中を覗こうとしたその時、グラッと体勢を崩し、支えようと握ったのが仏壇上部に付いている灯明のボンボリ、それを引きちぎってしまった。
可愛い孫とはいえ、私は拳の中に怒りを溜め、その手を上にあげたが、仏壇の婆さんと目が合った瞬間、
「お願いだから叩かないで、許してやって」と言われた気がし、その拳を下ろした。
まあ、こうやって孫の写真を撮っている私も、近い内にこの仏壇の中に収まることになるが、別に手を合わせんでもいい、時々仏間に遊びに来て成長している姿を見せてくれ、きっとそれが一番の楽しみになると思うしなあ。
そんな龍季が今日は神妙な顔つきで仏壇に手を合わせている。
保育園の運動会で勝ちたいらしい。
「そうか、必ず勝てるから頑張れよ」と励ましはしたものの、
「なあ婆さん、頼まれて困ったろう。内ら二人とも体育が大の苦手だったもんなあ、一等は無理としても、ふたり力を合わせて二等賞はなんとかならんものかな」
仏壇の婆さんが、OKとウインクを返した。