仏壇選びの達人

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第1回わが家のお仏壇物語

選外秀作「エッセイ」長谷川知子(愛知県・女性・34歳)


「いっくら泣いたって、あの子の病気が治るわけじゃない。あんたも母親なら、もっとしっかりしなさい。」未熟児、そして先天性の心臓病。片手に乗るぐらい小さいガラス細工のような我が子を目の前に後退りしてしまいそうな私の心を叱ってくれたのは母でした。
 勤続三十年のベテラン看護師で婦長経験あり。そんな母は事の重大さを私よりわかっていたのでしょう。厳しい言葉とは裏腹に仏壇に手を合わせ続けてくれた母。でも当時の私は目の前の娘の事で頭がいっぱいでそんな母の優しさに気付く事さえできずにいました。
 二度の手術を無事乗り越え、元気を取り戻した娘を胸に抱き、退院したあの日。父の口から、母が毎朝毎晩仏壇に手を合わせ続けていたという事実を聞かされた私の目からは、初めて涙が流れ落ちたのです。母の優しさと、無事に退院できた事への安堵感。そして入院している間、ずっとピンと張り詰めていた気持ちが、流れ出た涙によって解放されていく。そんな今まで経験した事のない感覚の中、かすんだ視界を仏壇に向けると、そこにはたくさんの紙の束が・・・。その一枚一枚に、
「早く元気になりますように。」
と、したためられた文字がビッシリ。母が仏壇に毎日手を合わせる度に一枚ずつ、祈りを込めて置いていってくれていたのでしょう。
 父や母や、たくさんの人に支えられ、娘の命が救われたのだと実感したあの日以来、私も仏壇に毎日手を合わせるようになりました。
「こんなにちょっぴりしか食べないの?もっと食べないと、元気に遊べないのに・・・。」
と、そのあまりにかわいらしい娘の心配顔に、思わず吹き出してしまった私。生活の真ん中に、そして家族の真ん中にいつもあるお仏壇。今日も娘を膝に乗せ、手を合わせます。
「家族みんな、元気で今日一日過ごせますように。」と・・・。

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