専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第1回わが家のお仏壇物語
二女が誕生してまもなく、妻の祖父が他界した。生涯農業に従事し、広大な土地でお米をはじめ色々な野菜を栽培していた。僕はおじいさんが、スイカのように大きくなった妻のお腹を、ゴツゴツした手で優しく触っている写真がとてもお気に入りである。
子どもたちは、妻の実家に行くのがとても楽しみみたいだ。なぜなら田舎の一軒家なのでとても広く、屋根裏部屋なんかもあったりして、まるで『となりのトトロ』に出てくるサツキとメイの家なのである。ここに来ると二人はまず畳の部屋の一番奥にあるお仏壇へと向かう。五歳のお姉ちゃんは、「チンチーン!」とリンを鳴らした後、両手を合わせ賢く目をつぶっている。一歳の妹は、得意気に「チン! チン! チン! チン!」と何度も鳴らしアンと首を傾げては、リン棒を振り回して離そうとしない。
一周忌の法要時、ちょっとしたハプニングが起こった。住職さんがお仏壇の前に座ってリンを鳴らそうとすると、そこにあるべき物がないのである。そうリン棒である。犯人は決まっている。しかし容疑者を問いただしたところで、まだ喋れないので無駄である。僕たちは大慌てでお仏壇の周辺を探しまくった。すると、住職さんの座布団の下からリン棒がコロリ・・・・・・。
ほっとした僕たちは座り直し、改めてお仏壇に向かった。すると遺影の中のおじいさんが、「わしは知っていたよ」と微笑んでいた。