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第5回わが家のお仏壇物語

銀賞「まんまんちゃん、あん」吉岡 恭子(大阪府・37歳)


小さな姪っ子に後ろから手を添え、一緒にお仏壇に向かって手を合わせる・・・。
幼いころ、同じように私にお唱えの言葉を教えたのは、父でした。木魚をたたく父の後ろで、一緒に手を合わせる時間が、私は好きでした。

父がこちら側で一緒に読経する人から、お仏壇から私達を見守る存在になったのは、私が十六歳の時。それ以来、お仏壇のまえに座ることは、私にとって、父と色々な話をする場所、より慕わしく、懐かしい時間となりました。

それから数年後、私にも婚約者ができ、彼が結婚の許可を得に、初めて私の実家に来てくれた時のこと。
「お義父さんに、挨拶したいから」
と、お仏壇の前に座ってくれました。
「仏さんって、こうして座って下から見ると、
日によって微笑んで見えたり、怒って見えたりするんやって」

幼いころに父から教わったことを伝えると彼は身を乗り出して、仏様を見上げました。
「どうみえる?」
私が聞くと、彼はちょっと情けなさそうに
「なんか・・・怒ってはるようにみえる」
と答えました。

来る道中、もし父が生きていたら、一人娘の私の彼氏にどんな仏頂面を見せたかと、内心おかしく思っていたところに彼のこの返事、私は思わず噴き出しました。

結婚してもうすぐ十年、彼は私の実家を訪れるたび、真っ先にお仏壇に向かいます。
私も隣に一緒に座り、まるで父の表情を見るかのように、仏様を見上げます。
自分を偽ることなく、まっすぐに日々を過ごしたか、生きていることへの感謝を忘れなかったか、互いを思いやり、また、他人に優しくできたか・・・日々を振り返る、大切なひとときです。

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