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第5回わが家のお仏壇物語

佳作「仏壇と両親が地震から守ってくれた」佐々木志郎(石川県・67歳)


私の実家は宮城県石巻市である。間もなく喜寿を迎える長兄が8代目として旧家を守っている。東日本大震災で、家屋は一部痛んだが、住めないほどの被害ではなかった。しかし、今後の地震に備えて、長兄は新築を選んだ。昨年の秋、家は完成した。

すべて家は新しくなった。座敷の一角に、子どもの時から見慣れた黒光りしている仏壇がある。タンスの上に置いてあり、省スペース型をしている。黒檀を使った唐木仏壇であり、60年前に作られたものである。

昨年、帰省した折、長兄はこんなことを話した。

新築する際、仏壇を変えようかと迷ったが、家屋は震度6強に耐えた。

家具、タンスあらゆるのもが倒れて壊れた。仏壇もタンスの上から落ちた。

しかし、位牌、仏具は散乱したが無キズだった。両親の位牌は足の踏み場のないところで毅然と立っていた。

仏壇が、両親が家を守ってくれた。天恵を受けた仏壇を手放すわけにはいかない。

父と母は一体の位牌に納められている。地域のリーダーとして、文学をこよなく愛した父。口数は少なく、梅が好きで3月に逝った母。

仲のよい模範的は夫婦だった。このことは戒名にある。白木と青畳の新しい家のなかで、旧家の匂いが残る仏壇を見るとホッとする。

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