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第5回わが家のお仏壇物語

佳作「ご馳走の山」神馬せつを(石川県・65歳)


 お仏壇の前に座ると、田舎で過ごした子どものころの風景が浮かんできます。

 見渡すかぎりの田圃には縦横に小川が流れていて、ところどころに堰があり、その中に入って遊ぶのが夏休み一番の楽しみでした。

 網を持って構えたところに、上流から棒切れを持った仲間が堰の底をかき回し、頃合いを見計らってグッグッと網を上げるとフナやドジョウ、タナゴやゲンゴロウ、ヤゴ、ヒル、イモリなどが入っています。

 イモリやヒルは道端に放置され、夏のカンカン照りの下では簡単に干物になってしまうのですが、思えば残酷なことをしていたことになります。

 そんな仲間も次々と天国に旅立ってしまいましたが、その一人ひとりの顔や姿を思い浮かべながら手を合わせていると、お仏壇の中に永遠の友情が存在することを感じます。

 そのお仏壇の前は、毎日のように「ご馳走の山」で、その山を築くために、妻は前日から工夫と努力を繰り返しています。

 もちろん、私の幼馴染のためだけではありません。妻は、過去帳にある先祖や親戚の人や知人だけでなく、自分が生まれ変わりだと信ずる戦国武将やその部下の命日にまで心を配りますので、日々の読経も大変です。

 でも、私はそんな妻を見ているのが大好きなのです。若い頃から働き詰めに働いた心労が蓄積し、今では病院通いを余儀なくされた妻ですが、ご馳走を作り上げてお仏壇の前に座ると、まるで生まれ変わったように明るく元気になるからです。

 今日も丁寧な読経が終り、そろそろ「おさがり」をいただく私の遅い朝食の時間です。

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