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第8回わが家のお仏壇物語

八田神仏具店賞「仏壇物語」大岩純子(愛知県・42歳)


私が胸のしこりに気づいたのは、まだ中2の時だった。お風呂で体を洗っている時に、「あれ」っと異変を感じた。何度も確認したが、やはり左胸にしこりがある。

私は、風呂からあがると、母に、
「ここに、しこりあるんだけど、なんだろ」
と軽い気持ちで声をかけた。

母は、慌てた様子で、私の胸のしこりを確認した。母は看護婦だった。知識もあったのだろう。胸のしこりが悪いものかもしれないと思ったようだった。

「明日、病院で見てもらおうね。もう、寝ましょうか」と母は、少し暗い顔で言った。

その夜、私は何だか寝つきが悪く、夜中にトイレに起きた。

すると、居間の仏壇のある部屋から、何か明りと声が漏れている。私は何気なく、そっと覗いた。すると、就寝したはずの母がお仏壇の前で手を合わせ、一生懸命祈っている。

「じゅんこが、がんじゃありませんように、じゅんこが、がんじゃありませんように。じゅんこが……」

母は何度も何度も、お仏壇の前で祈っていた。私は、その姿を見て、
「お母さん、ありがとう。」と心の中でつぶやいた。

次の日、この辺では、大きな病院に母と祖母と私の3人で行った。母も心細かったのか、祖母にも来てもらったようだった。

検査の結果は、良性の腫瘍ということだった。結果を聞いた時、3人で喜んだ。母も、本当にほっとした表情を見せた。

医師に、この年で胸にしこりができるのは珍しいと言われ、まだ大きくなるかもしれないということで、その後、日帰りで摘出手術も行った。

私は、手術後、お仏壇の前で、お礼を言って手を合わせた。

この仏壇には、小さい頃亡くなった父もいる。いつも、守ってくれていると感じる。お仏壇が居間にあるのは、家族の笑顔を見てもらいたい、守ってもらいたいという願いもあるのかもしれない。その後、私は嫁いだが、何か悩みがあると、ついつい実家に来て、お仏壇の前で手を合わせている。

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