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第8回わが家のお仏壇物語

田中佛檀賞「二十歳の決意」加納すずえ(福岡県・ 50歳)


私がまだ小学生だった頃、歳の離れた姉は二十歳で結婚しました。

中学を卒業すると姉は、寮のある学校へ通うために家を出、実家に戻ったのは、まだ寒さの残る春の日だったと記憶しています。

ある日、姉が知らない男の人を自宅に招きました。

それからおそらく沢山の過程があったのでしょうが、二人はめでたく結婚する運びとなりました。しかし、姉がどこかに嫁いで行くわけではなく、相手の男性に婿に入ってもらうことになりました。

結婚式を数ヶ月後に控えた頃、祖母が姉に
「何か欲しいものを言わんね。記念だから高価な物でも何でもよかよ」と言ったのを、私はその場で聞いていました。当然、綺麗なアクセサリーか、はたまた新しい車か?と凡人の自分はそういう答えを連想していましたが、姉の答えは全く違うものでした。姉は、
「前から欲しいものがあるとよ。新しいお仏壇、、、」と。

もちろん、祖母も私も不思議に思いましたが、そこからまた姉の言葉が重なりました。
「そうそう頻繁に買い替えるもんやないけん、結婚の記念なら紫檀の重厚なお仏壇がよか」と。

祖母が小さく「ふぅ」と言って笑ったのは、今思うと「あなたらしいわね」の意味だったのかも知れません。

それから間もなく我が家にとても立派なお仏壇がいらっしゃって、新しい兄も家族に加わり、その三年後には元気な男の子も生まれました。

二十歳だった姉は、孫もできもうすぐ還暦を迎えます。

38年前のあの日のお仏壇は、いつもどっしりと構え家族の中心にあり離れて暮らす私たちの心の支えでもあります。

最後に、今回の応募にあたりお仏壇の写真をパソコンに保存できましたことで、朝に夕にご挨拶ができる機会を得ましたことに感謝いたします。

仏壇公正取引協議会
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