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第10回わが家のお仏壇物語

銀賞「迎えた命」森戸寧子(福岡県・41歳)


まるで、マッチ棒のような遺骨だった。

火葬場の売店で買った一番小さな骨壺に夫と二人でその遺骨を納めた。

17週と2日。それが息子をはぐくむことができた時間だった。

産声を上げないままだったこの子は、果たして産まれたのだろうか?

それとも死んだのだろうか?

生と死と性の狭間をゆらゆらと行き交う不思議な命だった。

お葬式をするわけでもなく、かといって手放して納骨することもできなかった。

骨壺はとりあえず私の部屋に据えた。

まだ幼い上の娘に、弟の誕生とも死ともいえぬあの出来事をどう伝えたものかと、決めかねていた。

その道を夫と2人で通ったのは本当に偶然だった。

「こんなところに仏壇屋さんがあるんだね」と思い付きで店内に入り、

様々な仏壇を見せてもらった。

問わず語りのうちに、担当してくださった店員さんに春に死産をしたこと、

遺骨をそのまま自宅に置いていること、娘に話せていないことなどを伝えた。

「ご遺骨をお仏壇に納めて、いいお正月を迎えましょう」。

この言葉が「とりあえず」にしたまま止まっていた私の心を動かした。

「生まれるはずだった息子を家族として迎えよう」。

そう決意できたのだ。

小さな仏壇をリビングに据え、

生まれた日付と名前を刻んたプレートを用意し、そこに骨壺を納めた。

そしてようやく娘に、弟のことを話して聞かせることができた。

娘は「私も会いたかった」とポロポロと泣いた。

夫も私も泣いた。

お位牌や戒名があるわけでもない。読経をするわけでもない。

それでも仏壇の前に座り手を合わせるだけで、とても心が穏やかになった。

亡き命を祀ること、そして祈りのよすががあることが、こんなにも人を救うのだと驚きすらした。

今、息子は私たちの暮らしをじっと見守っている。

笑ったり、怒ったりするものだから、さぞ騒がしいことだろう。

夫と私のどちらかがお墓に入ることになった時、息子の遺骨を一緒に納めることにしている。

それまではまだまだ付き合ってもらうつもりだ。

祈りをかたちに 全日本宗教用具共同組合
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