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第10回わが家のお仏壇物語

銅賞「命のバトン」小松崎有美(埼玉県・34歳)


私は祖父に会ったことがない。私が生まれたその日に祖父は息を引き取った。産声の傍らですすり泣く声があがっていたと言う。

物心ついた時、誕生日の食卓はご飯、味噌汁、煮物、和え物、香物といった精進料理が並んだ。そして最後に場違いなケーキが登場した。

小学生になった年、いつものように台所で母が命日の準備をしていた。私はそれが嫌だった。

「誕生日なのになんで私だけこうなの」その場でわんわん泣いた。不思議なものでこの時の記憶だけはまだ色褪せない。ささくれた私の気持ちを母は丸く聞いてくれた。「ごめんね、じゃあもうやめましょう」

そう言って両親は少なくとも私の前では命日を思わせることをしなくなった。私は勝ち誇った気持ちだった。

しかし予想もしないことが起こる。お仏壇の掃除をした時、位牌を手に取ると何やら側面に文字が刻んである。

「春日和まだ見ぬ孫に思い馳せ」

祖父の句だ。私は目頭が熱くなった。おじいちゃんと呼ばれることなくこの世を去った無念さが滲み出ていた。そして誰より私は祖父に愛されていた。そう確信した。そして命日を大切にしたいと思った。なぜなら、この日は祖父から命のバトンを受け継いだ日だから。

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