専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第10回わが家のお仏壇物語
お父さん、今日はぐっすり眠れた?
お父さん、ビール美味しい?
お父さん、私もうすぐ四十路になっちゃうよ。お父さんみたいな人と結婚したいな。
私と父のお仏壇デートの会話の一部です。
私の父は、2年半近くの闘病の末昨年の夏亡くなりました。
いつからか、父とは素直に向き合えず、時間だけが無情にも過ぎていました。でも、心の中では、いつか私の結婚式でちゃんと感謝の気持ちを述べるから楽しみに待っていてね。私のウエディングドレス姿を見て泣いちゃダメだよ、いつかおじいちゃんになって孫の世話をよろしくね、とつぶやいていました。しかし、6月27日未明、私の願いは叶う事なく父は逝きました。父の死後、私はポカンと心の中が空っぽになり、お仏壇の前で泣く事が多くなってしまいました。この先どうしていいのかわからなくなり、父と素直に向き合えなかった自分に腹が立ち、途方に暮れる毎日でした。
お仏壇の前で手を合わせていると、いつもこっちを優しい笑顔で見つめてくれている父がいる事に気付き、泣いてばかりいても父は喜んでくれていないだろう。心配をかけさせてはいけないなと思い、気持ちを切り替えました。
今すぐにでも、大好きなビールを片手に私のすぐ横にいてくれるような、笑いながら見つめてくれている父がお仏壇から感じられるのです。
これからも、お仏壇の前で手を合わせ、毎朝「おはよう」と声をかける事から1日スタートします。私と父の2人っきりの秘密のデートの時間です。
今まで素直になれなかった分、お仏壇の前ではいっぱい甘えます。亡き人と素直に心を通わせられる場所。今日も1日ありがとう。
お父さん、また明日もデートしようね。