仏壇選びの達人

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第10回わが家のお仏壇物語

メイクリーン賞「身代わり」山本真理子(静岡県・59歳)


母が入院した。すり減った膝関節を手術で金属の関節に換えるためである。お仏壇のお世話は当然一人家に残った私の仕事になった。我が子のようにして育てた未だ若かっ た弟を亡くした母が、態々東京まで行って選んで買って送って戴いた、拘りのお仏壇である。

「毎朝お水とお茶を換えてあげてね」「3~4日に一度は香花のお水を換えてあげてね」と言って母は入院した。

朝起きると、慣れなく我流ながらも、先ずは昨日の水とお茶を流しに唱えながら捨てて、コップに新しい水をくみ、母のお気に入りの茶葉で自分の分も一緒にお茶を入れて、3日に1回は香花の水切りをして、植物活性剤も一緒に入れてお水を換えた。それらがすむと蝋燭に火をつけて、お線香を立て、両手を合せて、お祈りをした。今日一日の自分の無事と、お嫁に行った姉家族の無事と、そして母の手術の成功をお祈りしたのである。そして私はお茶と一杯のお水を飲んで、一日のスタートをするようになった。すると私は毎朝を清々しい気分で迎える事が出来るようになり、香花も新芽が吹いてきた。

そんな或る日お祈りしていたところ、「ガチャ!」という大きな音がして、同時に何かがピッと私の頬をかすめ、仏壇の中のお上人さんに当たった。振り返ってみると、神棚のお榊の入っていた花瓶が落ちて来て、仏間の真ん中にあるテーブルに当たって割れ、破片が私の頬をかすめたのだった。お仏壇の中のお上人さんを確認したところ、なんとお上人さんの頭に傷跡が出来ていた。咄嗟に私はお上人さんが、我流ながらも懸命にお世話をしていた私の身代わりになってくれたのだと確信した。

その後母の手術も無事に成功して、すぐに車椅子を押して歩けるようになり、退院する事ができた。今は87歳になった高齢の母が、又健康にお仏壇のお世話をしている。ありがたいお話である。

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