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第10回わが家のお仏壇物語

銅賞「祖父母への孝行」大塚千明(大阪府・23歳)


私がお仏壇と向き合うとき、その手には必ず食べ物がある。お供えものから私が頂戴するときもあれば、私がお供えするときもある。共通して言えるのは、私はそのときに必ず写真の祖父母に話しかけるということだった。

私の家のお仏壇にいる祖父母と、私は直接会ったことはない。生まれる前に亡くなった人たちを大切にするというのは、幼いころの私にはピンとこないことだった。それが変わったのはいつだったか、今となってははっきり覚えていないけれど、ただ始まりは、お仏壇に供えられた菓子が私の好きなものばかりであることに気付いたときだったように思う。

お供えしている菓子が食べたい。そんな不謹慎なことを言う幼い私に、父は言った。「きちんとご挨拶して取りなさい」そう言われてから私は、お仏壇に供えてある羊羹やおかきを頂くときには必ず一言声をかけ、写真と向き合うようになった。

それから数年たったある日、お仏壇にあった羊羹をみんなで食べながら、母がいった。「そこの羊羹、おばあちゃんお気に入りやったのよ」言われて気づく。私にとって祖父母は写真の中の存在だけれど、母にとっては、生きていた、好きな食べ物のある人なのだ。当たり前のことだけれど、気づくのには時間がかかった。「ほかに何が好きやったん」私は母に聞いた。近所の和菓子屋さんのお饅頭の話を聞き、次の日、私はその和菓子屋さんに行った。

「いつもありがとう、これ好きやって聞いたから買ってきたよ」その日、初めて私はお仏壇にお供えものをした。写真でしか知らない祖母と、初めてコミュニケーションをとれたと感じた瞬間だった。

それ以来、私は祖父母の好みの品を父や母から聞いて、お供えとして買うことが増えた。決してまじめなお仏壇との向き合い方ではないかもしれないけれど、それでも、祖父母が喜んでくれていたら、孝行できなかった孫としてはこれ以上幸せなことはないと思っている。

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