専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
お知らせ
高岡製箔(箔座グループ・金沢)の箔座日本橋がオープンしたのは2010年のこと。東京の中心にあって箔の魅力を発信してきたが、今春リニューアルオープン。金箔をはじめとする素材としての金属箔に留まらず、箔品工房による箔加工が、箔の持つ可能性と魅力、箔が生み出す新たな世界に導いてくれる。
箔座の美意識をかたちにした一つが「箔品(はくひん)」。箔に向き合い、箔に潜む表現する力を最大限に引き出してつくり上げた製品を言うが、箔座が表現する箔は、日本の伝統的な美意識を継承するものだ。
以前、高岡美奈社長から「古仏の御身を飾る金箔が時代を経てかすれ、下地の黒漆と金箔がお互いに融けあう境界のない世界に惹かれます」と箔の美についてお聞きしたことがある。
同様の美を箔座日本橋でお買いものをしたお客様はレジカウンターで体験することになる。
このレジカウンターの側面は硫化加工された銀箔で仕上げられている。硫化された銀箔はその一部をかすれた黒に変化させることで、深まる時を表現し、お客様を迎える。本来、平面表現であるはずの箔だが、ここでは奥行きのある箔となっている。
今回の取材では銀箔と墨をコラボした作品の写真も見せて頂いたが(日本橋めぐるのれん展「黎明の膜」)、それは銀箔が持つ無限の可能性を感じさせるものだ。
箔の潜在する力を身近に飾ることができるのが「箔アートパネル」。「平押し」、「風まぜ雪」、「雲間の月影」、「時、移ろい」の4つの技法と箔6種類、パネルサイズ3種類から組み合わせを選んでカスタムオーダーできる。さらに、コンセプトや空間にあわせ、箔座独自の技術とデザインによる箔加工のフルオーダーも可能。これらは「箔WORKS」という箔座の新しい事業展開である。箔加工での表現を追求する箔座の仕事は寺院や納骨堂などの宗教施設はもとよりのこと、モダンな仏壇、伝統的な仏壇の素材としても魅力的だ。
素材としての箔見本展示もリニューアルされた箔座の魅力のひとつだ。縁付金箔や断切金箔は私たちにとって馴染みが深いが、色箔 銀彩の多彩な色の展開は是非ご覧頂きたい展示コーナー。赤系や青系、緑系といった銀箔は見ているだけで楽しい。
リニューアルされた箔座に登場した新しい箔品のひとつが「WAVEバングル」。アクリルのバングルに箔加工を施した「アクリルバングル」は箔座のロングセラーとなっているが、「WAVEバングル」はバングルの表面を柔らかな曲線で構成される凹凸を付けたもので、箔の表情がより豊かになっている。
もうひとつの注目製品は「千筋まり型小物入」。球形の欅にロクロで筋を入れ純金プラチナ箔・銅箔などで仕上げた製品。小物入れであるが、故人が大切にしたもの、さらには遺骨を納める特別な容器としても魅力的だ。
店舗エントランスに置かれる展示台にも惹かれる。黒の砂目の中から金箔の輝き。闇の中から光が生まれる瞬間を感じさせる表現。ここにも「潜在する箔の力」が宿る。