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江戸時代のお盆(2) 清浄な火を生み出す苧殻

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江戸時代の盆市(江戸歳時記・国会図書館蔵)

 

お盆が近づくと苧殻(おがら)売りの声が街に響くようになる。

「魂祭の迎火に焚く料なる苧がらは 七月八九日の頃より をがら をがら をがら と売あるく声相響きける」

苧殻はお盆の時に先祖を迎えるための「迎え火」、そして先祖を送り出す「送り火」に使われる。地域によっては焙烙と呼ばれる素焼きのお皿の上で焚かれるのだが、何故、苧殻が「迎え火」「送り火」として用いられるのだろうか。
苧殻は麻の皮を剥いだ後に残る芯の部分のことを言うが、麻は古来より清浄な植物として考えられてきたようだ。例えば神宮大麻(じんぐうたいま)と呼ばれる神札がある。神宮大麻と言えば即ち伊勢神宮のお札を指すのだが、神札に対してわざわざ「麻」という言葉を盛り込んでいる。

また、神官が振る祓串には必ず麻の繊維が付けられる。又、上布と言えば、麻の繊維で作られた布のことを指すが、白い上布は葬儀の上下(かみしも)として広く使われてきた。これは麻が穢れを清める、あるいは穢れから身を守る力があると考えられてきたからだろう。

つまり、苧殻で焚かれる火は清浄な火であるということだ。今では何気なく苧殻をお盆の時に使っているが、元来は清浄な火を求めて苧殻を焚いたのではないだろうか。

苧殻売りの声と同時に聞こえて来るのが竹売りの声

「篠竹を切りてうりあるく 是は魂棚の四方に立て 菰縄(こもなわ)を四方に引渡し 其縄へ白茄子赤茄子をつり 竹の本へは草を結付けるなり たァけや たァけや たァけや と呼びてうるなり」

この一文の出典は『江戸府内絵本風俗往来』(1830年頃)であるが、現在では竹を四方に立て、そこに縄を張り巡らし鬼灯(ほおずき)を吊すのが一般的であるが、ここでは赤茄子白茄子を吊すとある。

赤茄子白茄子はこの時期の市場でも盛んに売られていた。

「魂祭の料に用ゆる草々を商ふ市場は市中東西南北の諸々に立たり七月十二日の昼より夜へかけて諸商人露店を張出す其の商ふ所の物いみじき種類なれども先間瀬垣(ませがき) 菰むしろ 竹 苧殻 粟穂 稗穂 赤茄子 白茄子 べにの花 榧の実(かやのみ)、青柿、青栗、味噌 萩 蓮の葉 蓮花 鶏頭 瓢箪 菰作りの牛馬 燈籠 盆提灯 線香 土器(かわらけ) ヘキ 盆」

以上の物が市場でお盆用品として主に売られていたのだが、文章はさらに続く。

「此日珠数造り 佛師 佛檀の漆器類を商ふ店は殊の外の繁昌なり 人盛んに出でて立錐の地もなき光景なり」

佛壇という用語がここで登場する。佛壇の漆器とは佛壇で使われる塗り仏具のことであろう。
お盆前にはお客様がひっきりなしに訪れていただろうことが、よく伝わってくる。

 

江戸時代の盆市(江戸府内絵本風俗往来・国会図書館蔵)

 

※宗教工芸新聞 2004年(平成16年)5月号 住田孝太郎   無断転載禁止

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