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第1回わが家のお仏壇物語

金賞「お仏壇とわたし」米田 和美(奈良県・女性・68歳)


わたしの気持ちが微妙に変化をもたらしてきたのは、亡き母の七回忌法要をすませた頃からでした。
母とわたしは、自他共に一卵性親子と認め合うほどの間柄で、常に家のため、娘のためにと働き続けてきた母と、どんなことがあろうとも、母を守り抜くとの思いで寄添っていたわたしだったのです。
しかしかけがえのない人の死は、大きな喪失感と哀しみや後悔と不安が「鬱」という体調不良となって現れ、明るいことや楽しいことなど感じる時も無いままに、ただただ母のあとを追うことばかりを考え始め、薬の力を借りる日々が長く続いていました。
その頃によく見た夢の中の母は、白い手拭を被って荒野を彷徨っていたり、お堂の石段にうずくまって頬づえをついていたり・・・・・・。
こうした長きに亘る孤独感と引きこもりから、ようやくにして解き放たれたのは一念発起で精一杯の思いを込めて「仏壇」を買替えたころからでした。
わたしにとっての「仏壇」とは須弥壇であり亡き人と一体になることの出来る安らかな居場所が新しく得られたことは至上の喜びでした。
そんなことがあって以来、夢に現れる母は決まっていつものスタイルで、互いに向き合ってお喋りをしていたり、大好きな畑仕事を愉しんでいる夢ばかりに変わってきました。
――長生きを願う日もあり、願わざる今宵もありて、吾は老いたり――
と、
「生きて良し、死しても良しの安らかな平常心」を取り戻すことができ、まるで日常茶飯事の如く、日に何回も仏前に座してはいまも、いろいろな事を亡き母に語りかけているわたしなのです。

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