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第1回わが家のお仏壇物語

メイクリーン賞「実家のお仏壇」岡田昭子(千葉県・女性・48歳)


 朝、起きたら、お仏壇の水をとりかえ、お線香をあげる。ごく自然な光景として、小さい頃の記憶に残っている。
 家にお仏壇がある。自分にとっては、それが当たり前の子ども時代を過ごしてきた。親戚がやって来て、お仏壇のまわりが賑やかになるお盆は、夏休みのちょっとしたイベントだった。ふだんの静かなお仏壇は、近づくのが少し怖かった。そこだけ、別の空間みたいに思えた。
 結婚して、家を出た。いま住んでいる所に、お仏壇はない。そのことに違和感もなく、毎日を送っている。
 だが、実家へ帰ると、まずお仏壇へと足が向かう。お線香をあげ、手を合わせる。いろいろな思い出が、あふれだす。懐かしく、優しい気持ちになる。
 ずっと守られてきた、子どもの頃。いまは、自分が母親として、家族を守っていきたいと思う。母親になること、母親でいることは、たいへんだ。辛いことも、たくさんある。そんなとき、お仏壇に向かうと、「なんとかなるさ。」という、父の口癖が聞こえてくる。
 もうすぐ、息子が小学校を卒業する。電車に乗って、養護学校へ通う日々が始まる。
 先日、そのことをお仏壇に報告した。昔の私と違って、息子はお仏壇を怖がらない。ぺこりと頭を下げ、大きな声で「ありがとうございました。」と言う。誰かが教えたわけではない。優しかったおじいちゃんの気持ちが、ちゃんと伝わっているのだ。そして、息子の「ありがとうございました。」という言葉に、私は元気をもらっている。

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