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第5回わが家のお仏壇物語

メイクリーン賞「仏壇と祖母とバレンタイン」石山 雅代(石川県・33歳)


「仏壇を守るのはうら(私)の仕事や」

祖母は生前自分でそう言っていた。

私の家には珍しく仏像の仏様が安置された仏壇がある。実際、毎日仏様にお仏飯をあげるのも、お花やお供え物の管理も、祖先の月命日にお坊さんに読経していただく、その際のお茶菓子の準備まで、全て祖母が担当していた。祖母は81歳。普通に生活できてはいたが、持病もあり、目や歯など弱っている箇所は色々あった。特に味覚障害が顕著で、甘い食物はNG、漬物などしょっぱい食物を好んで食べていた。大好物は茄子の漬物と明太子と昆布である。

ある日、私が仏間をこっそり覗くと、祖母が仏様や先に亡くなった祖父に語り掛けていた。

「今日も、無事に一日過ごさしていただいてありがとうございます」

その祖母は今から約3ヶ月前に突然亡くなってしまった。父によれば最後に病院に行く直前も、祖母は仏間にいたらしい。家の仏壇にお祈りできるのはこれが最後だと自分でわかっていたのかもしれない。

「心の清い人だった」

お弔いに来ていただいた近所の人は祖母のことをそう言った。

あれから3ヶ月経ち、バレンタインの季節になった。私は100日命日に仏壇の前で久々に読経し、チョコレートをお供えした。

「ばあちゃん、今なら固いものも甘いものも食べれるやろ?」

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