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第5回わが家のお仏壇物語

佳作「わが家自慢のお仏壇」石綿美代子(東京都・75歳)


 四十才を過ぎた長男の立場である、夫に頼んで、仏壇を買ってもらいました。

 しっかり入魂されたお坊様が、お膳の物を次々と召し上ります。「面笑しい、面笑しい」と、首をかしげながら、大変に悦ばれ、お酒も再々お注ぎしました。本当は食も細く、お酒も飲めないのだそうです。

 楽しそうにお話が弾み、「仏さんが喜んでるみたいやネ。」と、おっしゃいました。本当に泣き舅が喜んで呉れているようでした。

 それまでは、手作りの仏壇でしたから、新しい仏壇にお仏飯やお茶を供えると、先祖の格も上ったように感じました。

 子供の頃、祖母が称える読経の節が、好きで私は遊びながら口づさんでいたほどです。ですから仏壇の前で毎日のお勧めが楽しく、御近所の方にも披露しました。「お経が聞こえて懐しいと思っていたら、石錦さんとこだったの、やっぱり、良いですね」と、皆にも喜んで頂きました。昭和四十五年頃の事です。

 石綿家に嫁して間もなく、「催促のない処から先だそうよ」と、姑が教えて呉れました。先づ神棚、仏壇の順に供えて、催促出来る人間はその後でよい、とのことで分り易い信仰の姿だと思いました。

 敬う心の表現が難しい人にも、素直になれるようで、聞いた人は真面目に頷かれます。

 私は読経が好きで仏壇の前に座ると、体が浮き浮きします。同居の孫娘も、お腹に居る時から聞いているので、幼い時から私達と共に称えて呉れるのが一番の悦びです。

 我が家は日蓮宗ですが、命がけで一派を成したものは皆貴い、と考える私です。ですから他宗の方が訪れて、仏壇に各宗派の経文を称え、クリスチャンの方も合掌して下さるので、有り難く存じます。そして、私の自慢はどこのお宅の御仏壇よりも、我が家の仏壇の魂が一番光っている、と云える事です。

 幼稚園の時には、すでに観音経を称えられるようになっていた孫娘に、小学校二年生になって、ある日、お勤めを頼んだ事があります。緊張していましたが、いつも私が座る所に座って「私に称えられるでしょうか?」と問い掛けますと、お位牌の右の方から「上げろ」と、聞えたので方便品を称えると、今度は左の祖父母ちゃんのお位牌から、「良かったネ」と又、聞こえた気がしたそうです。

 孫は嬉しくなって、神力品偈も続けて称えたそうです。すると、他に何人もの人が一緒に称えていたみたいだった。と緊張したらしく、母親に泣いて報告したそうです。

 やっぱり、一度託してみて良かった、と、幼な子の純真さに感無量でした。

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