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第5回わが家のお仏壇物語

佳作「わが家のお仏壇」池田十三男(長崎県・59歳)


 私の記憶の中には、わが家にはいつもお仏壇があった。月命日に坊さんの読経を頂くこと60年に及んでいる。これは私が生まれる前から始まっている。

 かつて、居間兼食堂兼応接室兼勉強部屋である6畳1間のわが家に金箔付きのお仏壇が鎮座していた。お仏壇の主は御先祖様ではなかった。

 昭和28年1月、1歳3か月の私の兄は風邪を引き、1本のペニシリン注射であっけなく死亡した。母は昭和25年に死産も経験していた。わが家にお仏壇が設置された。父母の死児への供養が始まった。その後生まれた私や妹は幼い頃から手を合わせ、お仏飯を上げる係であった。

 父は昭和49年に新築した。お仏壇も新しくなり、父母の寝室に鎮座した。父母の供養は続いた。私は部屋を異にし、お仏壇に向き合うことが少なくなった。転勤や結婚で家からも離れた。

 平成8年、私が新築し、父母と同居することとした。父はお仏壇の設置場所を大きくするよう要望した。より大きいお仏壇も希望した。設置場所として、100cm×120㎝×90㎝を確保したが、新しいお仏壇を購入するまでには至らなかった。

 平成10年に母が、父も兄の50回忌を済ませて平成14年に亡くなった。お仏壇に御先祖様が入った。

 私は50歳を過ぎてから毎年のように入退院を繰り返すようになった。ようやく菩提心に目覚め、朝晩の勤行を始めた。先祖供養、家族一族の健康と安全及び私自身の健康を祈願している。お仏壇の前での写経も日課としている。

 お仏壇の地塗りが剝げ始めた。亡父からの買い替えの催促かもしれない。

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