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第11回わが家のお仏壇物語

八田神仏具店賞 「息子の成長」 原 徹(愛媛県・58歳)

妻は、難病のために、自宅から遠く離れた近畿地方の病院に入院していたが、闘病の甲斐なく三か月前に亡くなった。三年半に及ぶ壮絶な闘病生活だった。大阪に住んでいる息子は、私がなかなか病院に行けない分、頻繁に病院に行って、妻に付き添った。妻が亡くなったのも、ちょうど息子が病室に泊まり込んだ朝だった。私は運悪く、その前夜、夜行バスで自宅に帰ったばかりだった。うまくいかないときは、こんな悪いタイミングで最愛の妻の最期にも立ち会うことができないのかと悲しかった。

葬儀初と初七日を終え、息子が大阪に帰るとき、バス停まで車で送っていった。バス停に着くと、息子は「俺の部屋の机に十五万円を入れた封筒を置いてきたから、母さんの仏壇を買うときに遣って。」と言い残して車を降りた。息子はまだ学生だ。欲しいものも買わずに、少しずつ貯めてきたものだろう。妻の治療費を気遣い、一切の費用を親に頼らず、アルバイトをいくつも掛け持ちして賄ってくれていた。昼間は授業やアルバイトをこなし、入院中の妻の病室に何度も泊まり込んで付き添ってくれた。妻が亡くなったときは、だれに言われるまでもなく、一人で先に家に帰って遺体を受け入れる準備をした。大学に入学してから長い間離れて暮らしているが、私の息子とは思えない気配り、頑張りだった。

妻のために買った仏壇は、我が家で初めての仏壇だ。サイズは小さいが、妻が好きな花の模様があしらわれた可愛い仏壇を選んだ。妻は気に入ってくれただろうか。食事もできずに辛かっただろうから、好きだった食べ物をたくさんお供えしておいたよ。好きだった本も友達からの心のこもった優しい手紙も置いておくよ。君が産み、手塩にかけて育てた息子は、感心するほど立派な大人に成長しているよ。

息子には悪いが、仏壇はポイントが付くのでクレジットカードで買った。預かったお金は仏壇に置いて、お供え物として使わせてもらっている。

仏壇公正取引協議会
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