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第11回わが家のお仏壇物語

田中佛檀賞 「ココロの拠り所」 大脇桃子(岐阜県・30歳)


大好きなコロッケが喉を通らない、そんな経験を初めてしたのは祖父が亡くなったという知らせを受けた小六の夏のお昼だった。

母子家庭で育った私は祖父母に世話になることが多く、必然的にかなりのおじいちゃん子にもなっていた。

畑で農作業した後の帽子の匂い。お小遣いをくれる時、広告紙に包んで、ごはん粒で封をする仕草。そして、夕飯前に仏壇の前で一緒にお経を読む時間が大好きだった。お寺保育園に通っていた私は、いつも得意げにお経を読み、褒めてもらえるのが嬉しくて仕方なかった。

そんな祖父がもういなくなってしまった。その現実を受け入れるのは、当時の私には決して容易なことではなかった。しかし、仏壇に向かえば、いつでもおじいちゃんに話しかけることができるということだけは分かっていた気がする。

今でも人生に迷った時や、少し力を貸して欲しいときは、必ず仏壇に向かって相談している。
ただ、昔と違うのは、もう私のお経を褒めてくれる人はいない。代わりに、祖父が見ることができなかった私の娘、祖父にとっては曽孫がその座についている。世代交代だ。

形のある心の拠り所、そんな仏壇があってよかった。そう思いながら、今日も親子4世代で仏壇に向かう。

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