専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
お知らせ
お祀りする家にこそ、先祖の霊や故人の霊はお戻りになります
お盆には、盆棚や盆提灯を飾り、自分の家に戻ってくるご先祖様や亡くなった方お迎えしますが、なぜご先祖様や亡くなった方は戻ってくるのでしょうか。
そこには何か確かな理由があるわけではありませんが、私達は亡くなった後の世界があることを当然のこととしてきました。そこは現代的に言えば宗教的な理由付けになりますが、亡くなった後の世界があることを想像できることは、人として当たり前の能力なのかもしれません。
ご先祖様や亡くなった方が、お盆の時に本当に帰ってくるのか、と言われれば、「お祀りをされる方の元にが戻って来る」と言えます。お祀りをされない方の家には戻りようがありませんし、戻ってきても家中の人が祖霊をもてなすことがなければ、祖霊はがっかりするでしょう。
お盆だけではなく、大晦日にも愛しい人の魂は戻ってきていました
お戻りになる祖先の霊や故人の霊を迎えることは、かつて夏(秋)のお盆だけではなく、歳末にも行われていました。
「晦(つごもり)の夜のいとう暗きに ・・・・・・ 亡き人の来る夜とて、魂祭るわざは東(あづま)のかたには、なほする事にてありしこそ、あはれなりしか」(『枕草子』19段)
清少納言の記した『枕草子』には、大晦日の真っ暗な夜に、亡き人が来てそれをお祀りする習慣が都にはあったけれどもいまはなく、東国の方にはその習慣が残っている書き綴っています。
十二月の晦(つごもり)の夜よみはべりける
「なき人のくる夜ときけど 君もなし我がすむ宿や 玉なきの里」(後拾遺575)
この和歌は和泉式部のよって詠まれたものです。12月31日の夜には焦がれた方が帰ってくると聞いているけれども、思い焦がれた方はもうこの世にはおらず、私の住まいはまるで魂のない里のようです。
このように平安時代の都人にとって、大晦日は亡き人の魂がこの夜に戻ってくる季節もありました。
どうして魂は戻ってくるのか
私達の住む世界と、亡くなった方々の世界は繋がっています。定期的にこの世界に戻ってくることで、祖霊や愛しい方々は、私達に何かを教えてくれるのです。
現代に生きる私達は、そのことを感じ取る力を、お盆を通して復することができます。愛しいその方が戻ってくる、といっても、その姿そのものを見ることはできません。ただ、ご飯を用意し、お花を活け、蝋燭を灯し、お線香を薫じ、お盆提灯を灯すことで、愛しい方の気配、戻ってきた祖霊のざわめきの気配を感じる瞬間があるはずです。それはふとしゅた瞬間、例えばお部屋の中を抜ける風に宿る気配、蝋燭の揺らめきの中かもしれませんが、大切なことは「供えること」です。