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お仏壇とお雛様 わが家のお仏壇物語入選作品から

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お雛様の季節が間近になってきました。

2020年の第12回フォト&エッセイコンテスト「わが家のお仏壇物語」で八田神仏具店賞を受賞した「お仏壇が結んだ縁」ではお仏壇の横に飾られるお雛様が見えています。

お雛様は是非、お仏壇の側に飾ったり、お仏壇の中に飾ってみて下さい。大切なあの方、そしてご先祖様が必ず喜ばれるはずです。

 

それではお仏壇とお雛様の写真と文章で入賞された入選作品をご紹介いたします。

 

 

高田さんって、毎朝出がけに、お仏壇に手を合わせてくるでしょう?」
職場で席を並べる同僚女性から、ある日、ふいにそう聞かれた。
「そうだよ。でも、どうして分かったの?」
僕は、驚いて尋ね返した。
「朝、高田さんが職場に入って来られると、お線香というか、白檀のような香がふんわりあたりを包むんです。だから高田さん、お仏壇にお参りされてくるのかなって」
「匂い、気になる?」
僕はあわてて問うた。
「いえ、何だか落ち着く香です。小さい頃、おばあちゃんの家でかいだような、懐かしい香」
僕は、同僚女性を、その日以来、急速に意識するようになった。ささやかな香から、僕の毎朝の行動を推察できるような、心の細やかさに惹かれたのだ。

 僕には、二つ離れた妹がいた。妹は、お雛様を、両手の指で数えられる程にしか、飾ることが出来なかった。あれから20年以上経つが、僕は妹に替わり、桃の節句には必ず雛人形を出すことに決めている。妹がよく見えるよう、仏間に、お仏壇と並べて飾る。お雛様が隣に並ぶと、お仏壇の妹の遺影が、心なしかニッコリ笑っている気がする。僕は、美味しそうな菓子があれば、必ずお仏壇の妹の前に先にお供えする。妹が生きている時は、いつも菓子の奪い合いで、兄の自分が先に取ってしまって悪かったよ、と語りかけてみる。そして、妹に供えたお下がりを頂く時は、必ず一言「これ、もらうよ」と声をかける。すると、遺影の妹がかすかにうなずくような気がするのだ。

 例の同僚女性は、僕の婚約者となった。彼女が僕の家に挨拶に来た日、ごく自然に、しかも真っ先に、お仏壇に手を合わせてくれたことが、僕はうれしかった。僕の両親も、「感心なお嬢さんね」と彼女を褒めた。この人となら、ずっと上手くやっていけると僕は確信した。

 考えてみれば、お仏壇の妹が、僕と妻の仲を結んでくれたのだ。なぜなら、妻が、僕のお線香の香りに気づいたことがきっかけで、生まれた縁なのだから。

滋賀県・男性・40歳

仏壇公正取引協議会
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