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第2回わが家のお仏壇物語

銀賞「我家の仏壇」藤田哲夫(愛媛県・男性・65歳)


 我家の一日は起床すると夫婦で仏壇に祈ることから始まる。就寝前の祈りでその日が終わる。同じパターンが六年前に初めて仏壇を購入した日から毎日続いている。
 一人息子が三十一歳で急逝した。
 妻と二人暮らしになってから、我家の生活パターンはシンプルになり、規則正しい日常が続くことになった。
 息子が亡くなるまで、我家には仏壇がなかったので、お経のあげ方もわからず仏壇には興味がなかった。仏壇が入ってからは、お経をあげた後は毎朝絵手紙を供えるようになった。昨日の出来事を絵手紙にして報告する。生前、息子が絵を描いていたからだった。
 今では、二千数百枚の作品が揃った。日付を入れているので日記帳のようである。法事や盆の際には知人に披露し、在りし日の故人を偲ぶ。
 絵手紙は夫婦で交替で書いていたが、数年前からは夫婦で毎日描くようになった。月命日には仏間で夫婦展を開いて供養する。
 息子の死後数か月間は、悲しみと絶望感にうちひしがれて人格が変わったようになっていた妻だった。お経を覚え絵手紙を描いて日々の平凡な出来ごとを報告することにより、精神面で穏やかになっていった。私自身も同様なことがいえる。
 我家の生活の基点は仏壇であり、老夫婦の生活のシンボルである。変化に乏しい日常生活の貴重なアクセントになっている。

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