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第2回わが家のお仏壇物語

メイクリーン賞「おじいちゃん」井上ゆみ(岡山県・女性・43歳)


 私の娘が二歳になる前、今から十三年前に父は亡くなりました。
私は産後休暇を一年取った後職場復帰をしたので、娘が一歳の誕生日から父が面倒を見てくれることになりました。仕事から帰った私に、娘は毎日満面の笑みでおじいちゃんと過ごした楽しい時間の話をしてくれたものです。その娘ももうすぐ中学を卒業しますが、二歳になる前のことでも、晴れた日には自転車に乗せてもらい、港に船を見に連れて行ってもらったことなどをはっきり覚えているようです。そんな娘には、当時、おじいちゃんの死というものをはっきりと認識することが難しかった様です。
 父が亡くなり、仏壇の前に座り「おじいちゃんは今日からここにいるのよ」。と娘に話をしました。そして毎日仏壇に向かって手を合わせることを教え、毎朝ご飯をお供えすることが娘の仕事となりました。娘は欠かさず炊きたてのご飯を小さな手で大事に仏壇に持って行っていました。ところがある日から、朝お供えしたはずのご飯が綺麗になくなるのです。どうしたことかと思い、日曜日に気をつけて見ていると、お昼前に娘が仏壇の前に座り、手を合わせながら「おじいちゃん、いただきます」。と言ってお供えしているご飯を食べているのです。私は驚いて娘にどうしてそうするのか尋ねると、娘は「いつもおじいちゃんとお昼ご飯食べていたのに、おじいちゃんが一人で食べたら可哀想だから、おじいちゃんと一緒に食べるんよ」。と言ったのです。娘と父はいつもここで逢っていたのです。
 娘は、幼い頃は道端のお花を摘んでは仏壇に供えをし、小学校に上がると通知表を仏壇に置いておじいちゃんに報告。そして昨日は高校入試の合格内定通知をおじいちゃんに見てもらうと言いながら仏壇の前に座っていました。「仏壇の前に座るとおじいちゃんに逢える」ここでいつも祖父と孫は心を交わしているのだと思います。

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