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第2回わが家のお仏壇物語

佳作「両親が守ってくれたと思う山行」前田喜久子(兵庫県・女性・60歳)


 主人は私と違ってとても親思いで、何かにつけて、お仏壇の前に座ります。朝食前と帰宅後には習慣のようにお線香を焚きます。私は更年期障害からか、いろいろの「におい」が強く感じられるようになって、線香の「香り」がとても気になります。「毎朝、何をお祈りしてるの」と、無宗教に近い私は不思議でなりません。「気が弱いから神、仏に頼るのでしょう」と私は無関心を装っていました。
 ある日、主人と山梨県の登山に出かけ、道に迷ってしまい、終バスに乗り遅れ、途方にくれていました。田舎のことで街灯もなく、寒さも一段と厳しくなってきました。駅まで歩けば2時間はある距離の真っ暗な道を歩き始めた時、私たちの横にスッーと車が止まり、「寒いでしょう。よかったら駅までお乗りになりませんか。線香くさいかも知れませんが、よければ乗ってください。遠慮は要りませんよ」と、ドアを開けてくれた若いお坊さんに、私たちは「お願いします」と返事をしました。
 車中で、私は「お仏壇の中の亡き両親が守ってくれたのだ」と思うと、運転されているお坊さんに手を合わせている私が居ました。
 主人は世間話に花を咲かせていましたが、内心は「ご先祖様が守ってくれている」と安心していたそうです。駅に着いた時に、「少しばかりのお礼に」と、お渡ししましたが、「お気持ちは頂きますので、どこかで困っておられる方がおられたら助けてあげてください」と、どうしても取っていただけません。私たち2人目を合わせて「ありがとうございました。御恩は忘れません」と、お礼の言葉に、「仲良く元気で旅を続けてくださいね」と、両手を合わされたのです。私たちは走り去る車に深々と頭を下げていました。
 それ以来、私も主人と並びお仏壇に手を合わせるようになりました。毎日が気持ちよく、嫌なことがあった日も仏様に癒されているようで、仏様にお願い事をするのではなく、感謝するようになりました。主人にも感謝です。

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