専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第2回わが家のお仏壇物語
我が家には明治時代から引き継ぐ、幅120cm、高さ170センチ、奥行き70cmの三方開きの大きな仏壇があります。約20数年前痛みが激しくなったのでお洗濯を依頼しました。その時お仏壇の裏側に「1000円にて購入」との先々代の墨書が見つかり、仏壇屋さんに「今の値段では1000万円くらいしますよ、たいした財産家だったんですね」と言われました。その言葉に先々代のお仏壇に託した思いを感じ、「昭和の大修理」に出すお仏壇を感慨深く見送りました。
数か月後、我が家に戻ったお仏壇はまばゆいほどの煌びやかさを取り戻し、立派によみがえりました。購入した当時の装飾品や扉の細工に目を見張り、またそれらを新品同様に修復できる高い工芸技術に家族一同驚かされました。
文字通り、家宝になったお仏壇は仏間に鎮座しておられますが、最近はかわいい訪問者がひんぱんに訪れるようになりました。すぐそばに住む一歳半の孫が、仏間に来ては鈴(りん)をにぎやかに鳴らし、小さな手を合わせて「あん」と頭を垂れて拝むのです。誰が教えたわけでもないのに、お仏壇の前に行くといつも自然に「あん」をする姿は尊いもの。阿弥陀様もご先祖様も目を細めて喜んでいられることと思います。無心な所作に心打たれ、その有難さに私も手を合わせます。
この先、子々孫々までお仏壇とご先祖を大切にする心をずっと受け継いでもらいたい、そう願いながら孫の訪問を心待ちにしています。