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第2回わが家のお仏壇物語

佳作「仏壇に祈り、語り続けてきた日々」榎田伸也(奈良県・男性・36歳)


 わが家の仏壇は、かなり古い。少なくとも50年は経っているだろうか。
 取り立てて華美でもなく、ごく平凡なスタイルだが、この仏壇に、僕はどれだけ語りかけてきたことだろう。
 いや、語りかけただけじゃない、必死に祈り続けたことも数知れぬ。
 母方の祖母が亡くなったのは僕が小学校2年生の時。かれこれ30年が経つ。
 以後、祖父母や親戚が亡くなる度、何度も手をあわせた。
 特に必死に祈ったのは、僕が「統合失調症」という心の病気になってからだ。
 一日に何度も慣れぬお経を片っぱしから読み、祈った、祈った、ずっと。
 やがて僕の病状が安定し、しばらく仏壇は部屋の片隅に忘れられていた。
 ところが、である。ある日なぜか急に思い立って、自室の隣りの陽のあたる部屋に移したのだ。
 そして、その「移動作業」がまるで準備であったかのように、数日後、同じ病気を抱える、僕より1つ年上の仲間が突然旅立った。
 悲しみどころではない、意識していなくても涙が出続けた。
 そして、彼から来た最後の年賀状をフォトフレームに入れ、飾った。
 「太陽のような榎田さん。一生ついて行きますよ」
 賀状に大きめに書かれたこの言葉に、幾度胸を痛めたことだろう。
 いや、悲しんでいては、陽気だった彼も悲しむから、またけさも朝食前に手をあわせ、心のなかで話すのだ。きょうも彼の満面の笑顔が見たいから。

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