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第12回わが家のお仏壇物語

金賞 「娘をよろしく」 坂井和代(石川県・55歳)

青い海青い空。
ハワイで主人の姪の結婚式に参加した。
式の最後には、両親とハグしてから渡すレイサービスがある。
育てて貰った両親とのハグは見ているだけで、感動して目頭が熱くなった。
そして私の結婚式の時の父を思い出していた。
私の住む石川県では、お嫁に行く時にする風習の一つに仏壇参りがある。
赤い打ち掛けを着て、家の仏壇をお参りする。
その後お手引きと呼ばれる相手側の親戚の子供が、迎えに来て一緒に婚家に行く。
自分の家の水と婚家の家の水を合わせたものを玄関先で飲む。
婚家の水に馴染みますようにと言う意味だ。
次に赤い打ち掛けから白い打ち掛けに変えて、松竹梅と孔雀の模様の花嫁のれんをくぐって仏間の入りお参りする。
その一連の行事が仏壇参りだ。
仏壇参りを終えてホッとしていると、父が急に頭を下げた。
娘をどうかよろしくお願いしますと。
主人の父も頭を下げて答えた、こちらこそよろしくお願いしますと。
あれから30年。
時代が変わり仏壇参りの風習は殆ど聞かなくなった。
同棲してから籍を入れて、式はしてもしなくても、そのうち海外でウエディングフォト撮るくらいかなと聞くと、結婚のあり方が進化したのかなと思う。
結婚式前のモーニング姿の父と主人の父の男親同士の仏壇の前での真摯な挨拶姿は、今では時代遅れなのかもしれない。
父の挨拶姿の写真に、感謝の気持ちが込み上げてくる。
娘をどうかよろしくお願いします。
父の声が少し震えていた。
16年前に他界した父を思い出して、鼻の奥がギュッと痛くなった。

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