仏壇選びの達人

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第12回わが家のお仏壇物語

銀賞  「我が家のお仏壇」 及川 守(宮城県・71歳)

「おじいちゃーん、こはるね、頑張って一位になったよ」
二年生の孫が、息をはあはあさせ帰ってきた。持久走大会一位の表彰状を手にして、
「よかった、よかった。さあ、なむなむ様にお知らせしようね」
表彰状を仏壇の前に飾ると、孫はぴょこんとその前に座った。
「なむなむ様、こはるは、おじいちゃんに教えてもらったように最後の一周で頑張り、力を全部出して一位になりました。ありがとうございました」孫は、目を閉じ小さな手を合わせて、そうつぶやいた。
東日本大震災の二カ月前に生まれた孫は、さまざまな逆境の中、病気一つせず元気に育ってくれたので、いとおしさもひとしおである。
息子たち夫婦が共稼ぎなため、孫は学童保育から帰ると、私と妻がお世話をしている。
私は毎朝仏壇に手をあわせ、妻は季節の花や果物・菓子などを供えている。
そんな私たちの姿を見て、孫は小さい頃から、何かあると仏壇に手を合わせ「なむなむなむ・・・」と拝むようになった。
それから家族全員が、仏壇のことをいつしか「なむなむ様」と呼ぶようになった。
ある日、孫が仏壇に手をあわせ、真剣な表情で、何かぶつぶつ小声でつぶやいていた。
「なむなむ様と何を話していたの?」
と聞くと、「ひ・み・つ」といたずらっぽく笑って答えた。
「だれにも絶対言わないから、教えて」とこちらも、孫に負けじと切り返した。
「おじいちゃん、おばあちゃんがいつまでも死なないように、とお願いしたの。だれにも言わないでね、約束だよ」
『長生きしてね』とか『健康でいてね』ではなく『いつまでも死なないように』という孫の心のこもった表現に、胸が一杯になった。
孫の成長を見守りながら、一日一日を大切にできるだけ長く死なないように頑張りたい。

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