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第12回わが家のお仏壇物語

佳作「真夏のお仏壇の思い出」佐藤里華子(青森県・48歳)

あれは私がまだ5歳くらいの熱い夏の日の午後だった。
他の部屋よりなぜかちょっぴり涼しいお仏壇のある部屋で、ひとり遊んでいたときのこと。
ふと、お仏壇を見ると、複数ある扉が気になった。
「この扉、いつも開いているけど閉まるんだろうか?閉めたらどうなるんだろう?閉めてみたい!」という衝動にかられ、何の迷いもなくまず位牌の扉に手を伸ばし、閉めてみた。
なんなく閉まった扉の感触が心地良くて、なんだかちょっぴり楽しくなった。
次はお仏壇の扉だ。
内側の扉を閉め、外側の扉も閉め、お仏壇の扉は完全に閉まった。
全部の扉を閉めて何とも言えないすがすがしさを感じたのも束の間、はたと空気が変わった。
そして、何やら視線を感じるではないか。
仏間にも隣の部屋にも誰もいないのに、それでも何やら何かの視線を感じるのだ。
どうも上のほうから見られている気がして仕方ない。
恐る恐る顔を上げると、お仏壇の上に飾られている、ひいおじいさんとひいおばあさんの肖像の目が、
完全に怒ってこちらを見ている。
「!!、扉を閉めたからだ!」
とたんに全身に走る寒気と恐怖。私は悲鳴を上げて泣いて走って祖母がいる部屋に入った。
訳を話すと、祖母は激怒した。
「仏壇の戸を閉めるやつがいるか!!なんて罰当たりな!!」とこっぴどく叱られた。
その目は仏間の肖像の目より怖かった。
その話を聞いた祖父が面白がって、その後私がお仏壇にお供えしてあるお菓子を取りに仏間に入る度に、
ふすまの陰に隠れて「ぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~」などと低い声を出して怖がらすのだからたまったものではない。
そんな祖父も今ではお仏壇の上で優しく微笑んでいる。
私はというと、あの頃よりはだいぶマシにはなったが、怖がり故未だにお仏壇がちょっぴり恐ろしい。

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