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第12回わが家のお仏壇物語

佳作「お仏壇からの自己紹介」松尾奈央子(愛知県・34歳)

私には3歳で亡くなった弟がいる。私が5歳の時だった。それ以来、母に倣ってお仏壇に手を合わせたり近況報告をすることで、弟とのコミュニケーションが取れているような気がしていた。なぜかお仏壇の前に正座をして話しかけると心が落ち着くのだ。

お盆には毎年綺麗な盆飾りで仏様をお迎えする。迎え火や送り火を焚き、迎え団子と送り団子を作る。そして大きな金だらいをお仏壇のある部屋に持ってきて、家族で線香花火をしながら「綺麗だねー、見てるかな?」と話しかける。きっと弟も一緒に見ているだろうと思えるこんな瞬間がとても好きだった。

そんな私に娘が生まれてから不思議なことが起こった。まだ言葉をうまく話せていなかった2歳の娘を連れて、お盆に実家に帰省した時のこと。娘がお仏壇の中をじーっと見つめ、突然「ゆーちゃん、ゆーちゃん」と言ったのだ。一瞬理解出来なかったがすぐに、あぁこれは弟が姪っ子である娘に自分のことを伝えているのかなと感じた。

弟の名前は「ゆうすけ」。生きていた頃には皆がゆうちゃんと呼び、本人もそう言っていたのだ。一生懸命にお仏壇を覗き込み、娘は誰かの口の動きを真似しているようにも見えた。そして「ゆうちゃんいたの?」と聞くと、「うん、いた。ばいばい」と言ってお仏壇に向かって手を振った。お仏壇を通して、大切な弟の存在を改めて気づかせてもらった気がした。きっと、僕もいるよ、叔父さんだよと娘に伝えたかったのだろう。

その娘にも弟が生まれ、現在私は2人の育児に奮闘中。私が幼い頃から、祖母や母は「ゆうすけはきっとあなたの子供として生まれてくるから、その時はたくさん可愛がってあげるんだよ」と言っていた。息子を見るともしかしたら本当に弟の生まれ変わりかな?なんて思うこともある。子供たちをたくさん可愛がり、そして命の大切さも伝えていきたいと思う。

仏壇公正取引協議会
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