仏壇選びの達人

専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報

第15回わが家のお仏壇物語

銅賞「笑ってじいちゃん」 内藤久代(愛知県・65歳)

 2017年8月、父は88才でその生涯を閉じた。晩年は認知症を患い、同居の私は介護と仕事を両立しながら看ていた。夫の協力もあり、あと7ケ月で定年を迎える前年の8月に脳内出血で旅立っていった。子供の私達姉妹にも、孫にも、ひ孫にも怒った顔は思い出せない。父はいつもにこにこ笑顔で、どんな事も引き受けてくれ、その要望に全力で応えようとしてくれた。我家にとってはスーパーじいちゃんだった。皆に愛され葬儀、49日もしめやかに行われた。時が流れてゆけばゆく程哀しみが押し寄せた。お仏壇の前で祈れば、声や姿が繰り返し胸に広がり、至らなかった自分を責めた。お仏壇の前だからこそ、父に逢い素直になれる自分がいた。

 そして一年後の8月、一周忌を迎える事になった。全ての供養が終わり、娘家族が帰る前にもう一度拝みたいと仏間に戻った時だった。当時8才と6才の孫が普段田舎には遊ぶものが無く常備していた風船を持ち出し、娘の力も借りて膨らませ始めた。「どうするの?」と聞く私に「じいちゃん、みんな帰ったら淋しいよね、かわいそうだから…」と顔を描いて仏壇の側に2つ供えていた。「これで大丈夫!!」満足げな2人の孫に父はどれ程喜んでいた事だろう。静まり返った仏間に行き、そっと写真を撮った。「じいちゃん嬉しいね。皆んな側についてるから、じいちゃんも皆んなを守っていてね」私はそう言い、2つの風船を撫でた。

 今から5年前の話。孫2人は今年中学生になる。そして8月には七回忌を迎える。お仏壇に孫は今年何を供えてくれるだろう。そして新しく生まれた内孫は1才になる。父よ、その日は目を細めて遺影から見ていて欲しい。

 お仏壇には親族1人1人の願いや祈りが込められている。そう想いながら私は今日もお茶を祀り、線香を立て、朝を迎えられた事に感謝している。

仏壇公正取引協議会
祈ってみよう、大切な誰かのために。PRAY for (ONE)