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第15回わが家のお仏壇物語

佳作「わが家のお仏壇・ひと語り」 青木ちどり(富山県・62歳)

 わたしの住む地域は、その昔「真宗王国」と呼ばれ、真宗のお寺やご門徒さんも多く、一向一揆の舞台にもなりました。お仏壇は加賀仏壇の流れをくみ、各家庭のそれは、宗派を問わず金箔が施され、まばゆいばかりです。

 わが家に今のお仏壇が納まったのは、半世紀前。当時は家の中で一番きらびやかなものでした。わが家は真宗ではありませんので、お仏壇の最上段には、阿弥陀如来像が鎮座されております。台座を合わせても二十センチくらいの木造造り。初代が当家を興した際、菩提寺から参られました。

 それから約二百年、わが家の歴史と共にいらっしゃいます。没落貧乏し、田畑屋敷を手放した時も、共にいらっしゃいました。今では台座の金箔はほとんど剥げ、後背の輝きはくすみ、お姿にも漆の部分が見えます。

 今のお仏壇がわが家に来て間もない頃、掃除好きの母が何を思ったのか、お仏壇の中を水拭きして、金箔の一部が落ちてしまう事件がありました。今もその部分だけ、漆の黒が際立っています。

 わたしが幼い頃は、祖父が毎朝お仏壇の戸を開け、手を合わせておりました。祖父が病に伏してからは、母が読経をしておりました。母が他界してからは、父がたどたどしく経を読みました。父亡きあと、わたしの日課となっております。

 朝、お仏壇の戸を開け、目に入る金箔の中の漆の黒。母のそそっかしさを思い出します。木魚でリズムを取り読経をしますと、父母や、ご先祖様たちと会っている気がします。わたしは「幸せでありますように」と結びます。

 お仏壇は祈りの場所でもあります。言葉を聞き入れ、どこかに繫がり、小さな慈悲の輪を広げているように感じます。これからも、愛おしさと温かさを与えてくれる、よりどころであってほしいと思っております。

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