専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第15回わが家のお仏壇物語
「死ぬ時はさくらが散りる頃がいい」と言っていた夫が、二年半の闘病の末、五月上旬桜の散りはじめ朝、天国に逝きました。
二七日の法要の後、ご住職が「四十九日の法要までにお仏壇を安置することで、落ち着きますよ」と話されました。
初めての仏壇選びに困惑し、大小の仏壇店を回り説明受けたり、ネットで調べたりしましたが、中々決めかね迷いました。
ただ小さい家の、夫の自室に相応しいお仏壇と、一歩一歩条件を絞り、いずれ息子に渡す時が来ることを考え、二人で選び双方が納得するお仏壇を選ぶ事にしました。
その結果、落ち着いたダークブラウンの小型を選び、ご本尊は木彫の阿弥陀如来、位牌仏具を時間をかけ、吟味し決めました。
四十九日の法要後、「魂入れ」をご住職によって厳かに行われ、ホッとしました。
初めは夫が落ち着く場所と思っていましたが、日が経つに連れ、遺された家族と亡き夫との対話と感謝の場所となっていました。
八十歳をこえた今、人は天国に帰ってからも、残っている家族の無事を守り祈る、お仕事があると実感しています。
「今日も無事であります様に」のお願いから始まり、息子も仕事へ行く前、帰ってきてからと、手を合わせ心の対話をしています。
食事の時は、夫が好物だった品を、小皿に分けて一緒にいただき、アルコールには目がなかったので、夏のビールに始まり日本酒、焼酎、ワインといつもお仏壇は賑やかです。
お仏壇の前に座り、お願い、報告、相談、そして感謝、その日によって手を合わせる内容は違うけど、大切な場所となっています。
我が家の真ん中にあって、何も言わないが息子と私の心の中心にお仏壇があります。
お仏壇を囲んで、家族が繫がり、一人ひとりを生かせて貰い、今も私たちは三人で暮しています。今年で亡くなって、八回目のさくらが咲く春が来ます。