仏壇選びの達人

専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報

第15回わが家のお仏壇物語

佳作「小さなお仏壇に心を込めて」 萩原友美(宮城県・61歳)

 父が亡くなり、母が施設に入って、実家を片付けることになった。大正生まれの父は物を捨てないし、母は購買意欲が旺盛な人だったから、実家仕舞いは世間で話題の通りに大変だった。なんとか片付けたが、困ったのが仏壇の行く末だ。小さいときから「朝は一番茶とお水を仏様に供えること」と言われて育ったので、実家の仏壇を引き取ることに抵抗はない。これから先も私ができるうちはお世話をする。でも、その先はどうしよう?娘も息子もきちんと仏様に手を合わせる子ども達だが、県外に就職している。二人が努力して得た場所を捨てて戻ってこいと言う気持ちにはとてもなれない。いっそ、仏壇にお引っ越し願う方が現実的ではないだろうか。

 この機会に、大きくて古い仏壇をアパートでもマンションでも負担なく置けるようにモダンでコンパクトなものにしよう。そう決めて何十回も仏壇店に足を運んだ。掌に乗るようなミニ仏具の美しさに感嘆し、過密状態だったお位牌を一つにまとめられると知っては驚いた。仏壇も進歩しているんだ。でも、どうしてか胸がちくちく痛む。大きくて立派な仏壇にするのならいいが、サイズダウンするのはどんなに合理的な理由があっても何か気が咎めるのだ。

 悩んだ私はお寺に相談した。 

 ご住職は「大きさではなく、供養する気持ちが大切なんです。古いお位牌は寺で読経した上でお焚き上げしますよ」と言ってくださった。私のちくちくは少しずつ治まっていった。

 新しいお仏壇は、明るいリビングのチェストの上に落ち着いた。いつも目がいき、手が届くところだ。仏壇がぐっと身近になった気がして、話しかけながら小さな花瓶に庭の花を活ける。可愛らしいハーブの花も仏様に見せたくなる。これまでの仏間との違いにご先祖様はびっくりしているかも知れない。

 今日もお線香を上げながら話しかける。

「住み心地はどうでしょう?お引っ越しはまだ先です。ゆっくりしていてくださいね」

仏壇公正取引協議会
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