専門紙「月刊宗教工芸新聞」が提供する
仏壇と仏壇店情報
第15回わが家のお仏壇物語
父が仏壇を買い替えた時のことである。「今度の仏壇は家紋が付けられてよかろう。しゃれとうやろう。」と上機嫌の父。家紋は後日届くとのことで、父はこどものように郵便受けを毎日何度も覗いていた。家紋が届くと父はニコニコしながら鼻歌を歌い家紋を接着剤で付け始めた。ところが、付けても付けても家紋は仏壇からポトンポトンと落下。「おかしかね~なんでくっつかんとやろうか」と父の声。そうだ!父はものすごい不器用だから接着剤も付けることができないかもと思い、私と交代。でも、結果は同じ。「おかしいよね~家紋が違うんじゃない?」と母に言うと、「そんなことないよ!お父さんが間違う訳ないやろ」と自信満々の母。でも、家紋の一覧表を見ると大きな声で「あ~!!お父さん違っとう。よく似ているけど、お父さんが注文してきたのは、『丸に木瓜』、我が家の家紋は『丸に四方木瓜』よ」と笑いながら話す母。父は茫然、もう笑うしかない。父と母と私と顔を見合わせ大笑い。後日、本物の家紋が無事に届き、父が接着剤で付けると今度は不思議と1回でちゃんと付いたのです。家族で「家紋が違ってるぞ!お前たちしっかりしろ!自分の家の家紋を間違えるなんてけしからん!とご先祖様がはらかいて家紋を落としてくれたのだろうね。もう絶対に間違えないね~」と話したものです。付けた本物の家紋は数十年経った今もしっかりと付いており、その後一度も落ちることはありませんでした。この思い出の父は、去年3回忌で遺影の人となりました。毎日遺影を見る度に思い出してしまいます。